宅配寿司

養老猛司氏のエッセイにこんなことが書いてあった。

~娘さんと蕎麦屋に行って、おろし蕎麦となめこ蕎麦がメニューにあったから、おろしなめこ蕎麦を注文したら店員さんにそれは出来ないといわれた。そんなものは適当に料金載せてチャチャッと作ってくれれば良いのに~
とまあ、そんな話。

これを読んで僕自身もすごく合点のいくことに先日遭遇したので今日はその話。

僕にとって寿司は嫌いではないけれど好きでもない、といった位置づけで普段食べることはあまりないのだけれど、一週間くらい前に宅配寿司「銀のさら」のチラシがポストに入っていたのでたまには寿司もいいかな・・・と、その日は寿司で晩酌することに決めた。


決めたのですが、電話する前に注文する品を決めなければなりません。

一人で出前注文するとき一番困るのが「宅配は***円以上からとさせて頂きます」という文言。銀のさらの場合は1500円以上となっています。2人なら"ばらちらし"890円×2でクリアですが、1人で丼物を2つ頼んでも仕方がないので選択肢は自ずと高額商品に絞られてきます。

一人前の盛り込み桶メニューは、一番安いのが「子にぎり7930円」です。7貫はいくらなんでも少ないですから2つ頼んで14貫にすれば1860円で宅配条件もお腹の満腹条件も満たされそうです。

ところが・・・子にぎりだけにわさび抜きのようです。わさびの無い寿司など晩酌のお供としてはサイテーです。だいたい、おもちゃまで付いてきます。一人で晩酌しながらオマケのおもちゃで戯れている姿は想像するだけでも悲しい風情なのでこれは却下することにしました。

さて、子にぎりを超えると中途半端な価格の1人前桶が並びます。

「薩摩9980円」「伊予101230円」「匠101280円」など、単品1500円を超えるのは「極121680円」「山代111980円」「美濃122480円」とあります。1500円を超えればどれでもいいつもりだったんですけど、よくよく見るとどれも写真にホタテとタマゴが必ず入っています。この2つは食べられないわけではないけれど、できれば避けて通りたい食材なので悩んだ挙句「お好みメニュー」から選ぶことにしました。


ところで、たぶん最新の銀のさらのメニュー表だと思うのですが、観音開きのメニュー表は表紙から中表紙まで旬の食材として「湯引き炙り 穴子 活媛あなご」の文字が躍っています。

僕がイメージする火の通った白い穴子ではなくて半透明で鯛の寿司のような写真と共に「期間限定1015日まで、松山農林水産ブランド認定、愛媛県知事賞受賞、はっきり言って希少価値、穴子の生の食感、本来の旨みが驚くほど新鮮」とこれでもかというくらいの大文字で「湯引き炙り穴子」をアピールしています。

そこで、お好みメニューから「マグロ、イカ、甘エビ、数の子、あじ、ウニ」と注文して、最後に「メニュー表の表紙にある湯引き炙り穴子ください」と言ったら、店員さんが「・・・少々お待ちください」・・・で12分経って・・・「湯引き炙り穴子ですと、穴子づくし1人前か、幸2人前なら入っているのですけれど、単品では無理なんですよ」とのこと。ちなみに穴子づくし一人前は8貫1480円、幸二人前は203980円である。


このとき僕は何も言わず、代わりに湯引き真鯛を注文した。

以前なら融通、機転の利かなさに愚痴の一つもこぼしたかもしれないけれど、このときはただ、電話口で対応してくれているアルバイト君、そしておそらくはその時間帯に銀のさらで働いていたアルバイト諸君、全員の未来がおそらくは洋々としたものではないであろうことを思うと腹も立たず、ただただ呆れてしまった。

養老毅氏も書いていたけれど、要するに、マニュアルというのが問題なのだ。マニュアルを作らなければ何も働けない人が多いから仕方が無いといえばそれまでだけど、本来、マニュアルというのは仕事の基本動作手順というべきものでマニュアルをこなすのは最低限レベルなのだけれど、いつしかマニュアルが職務を遂行する上での最高のバイブル化してしまったのだ。だから先の蕎麦屋や宅配寿司のようなことがおこるのだ。

一人でふらりと鮨屋に寄って「穴子ください」と言ったら、マスターが「穴子?ウチの穴子は8貫からだけどいいかい?わりぃけど、2貫じゃ俺に穴子は握れねぇなぁ~」と言われたら・・・

・・・暴れちゃうかもしれません・・・

 

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