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白桃

 

春から夏にかけての果物売り場は忙しい。

5月頃に枇杷がお目見えする。入れ代わるようにさくらんぼ、白桃、そしてもう少しすると西瓜が並び始めるだろう。

どれも旬が極めて短いから「値段が高いから・・・」などと躊躇していると向こう1年間後悔することになる。

 

そういうわけで僕はこの辺りの果物を買うことに躊躇することはない。

 

本音を言えば枇杷など長崎で学生生活を送っていたからあんなものは畑からチョイと失敬して・・・、いや、荒れ畑に放置された枇杷の木から捥いで食べるものだと思っていたから買って食べるというのは不思議な気持ちなのだけれど。

 

さくらんぼ、これはもう山形産の独壇場だ。今の時期は北海道産のさくらんぼを売っているようだけれど勝負にならない。出てくる順序が逆ならまだしも先に山形の佐藤錦を出されて北海道産が勝てるわけが無い。大相撲の優勝決定戦後の弓取り式みたいな物悲しさが漂っている。弓取り力士の心中さぞ辛かろうと思う。

 

西瓜は食べない。いつ頃から食べなくなってしまったのかは忘れてしまったがあれはカブトムシの食べ物である。僕は誇り高き人間であるからカブトムシと同じ釜の飯を食うわけにはいかない。

 

白桃、これは厄介な果物だ。まずは立ち居振る舞いが他の果物とは別格である。桃肌という言葉を例に挙げるまでも無く、優美で繊細な女性的印象を見るものに抱かせる。

 

そんでもって一個一個クッションで保護されている。まさに箱入り娘である。こんな果物は他にない。

 

さらに食べるときまで気を使う。他の果物は買ってきたら冷蔵庫に放り込んでおいて食べたいときに食べれば良いのだけれど、白桃は”食べる1~2時間ほど前に冷蔵庫に入れ、冷やしてからお食べください”と書いてある。化粧直しするから2時間待っててね、ということだ。白桃様のために2時間待ちなさいとオアズケをくらうわけだ。

 

結婚式で化粧直しのために2時間も待たされたらブチ切れて帰ってしまうが白桃様のためならお待ちしましょうと思わせてしまうのが凄いところである。

 

しかも白桃はキッチンに置いておくとほのかによい香りを漂わせてくれる。

 

さて、果物ではありませんが、これからの季節は茶豆(枝豆)が出てきます。新潟茶豆が8月上旬辺りから出始めて、だだちゃ豆がお盆過ぎの1週間位出回ると思います。これも夏の風物詩ですね。

 

 

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