歯列矯正治療中の痛みについて
歯列矯正治療中の痛みについて(9)
PART2〜”歯が動く際に生じる炎症反応に起因する痛み”に対する対応策
歯が動く際には必ず炎症反応が生じます。炎症反応を生じさせずに歯を動かすことは不可能ですから、歯列矯正治療中の炎症反応に起因する痛みを完全に取り去ることは残念ながらできません。しかしながら、痛みの性質や、発生する時期を知り、また患者様の社会生活のスケジュールなどを考慮し、痛みと上手に付き合うことで痛みを最小限に抑えつつ、快適に歯列矯正治療期間を過ごしましょう。炎症反応に起因する痛みと上手に付き合うポイントは
?痛いことは痛いが、我慢できないほど強い痛みではない(痛みの性質を知る)
?矯正装置装着直後、あるいは調整後の数日間に痛みが生じる(痛みの発生する時期を知る)
?試験など、社会生活上の重大イベントがある際の対応(社会生活のスケジュールへの対応)
上記三つについて説明します
?痛みの性質〜歯列矯正治療中の痛みについて?、歯列矯正治療中の痛みについて?、歯列矯正治療中の痛みについて?、をご覧ください。
?痛みの発生する時期〜概ね矯正装置装着直後、あるいは調整後、2日目に痛みのピークを迎え、その後3〜5日間程、徐々に弱まりながらも痛みが生じます。要はこの期間の痛みをいかに抑制するか?ということです。痛みの感じ方には個人差がありますが、強い痛みを感じるようであればやはり消炎鎮痛剤を服用するのが良いでしょう。一般的に、矯正歯科クリニックでは毎回お薬を処方することはしませんから、必要な方は担当の先生に相談してみてください。また、この時期はなるべく軟らかい食事メニューにするなどの工夫をあらかじめ計画しておけばより快適に過ごせると思います。
?入試やテスト、出産など、歯列矯正治療中には様々なライフイベントが起こります。このような時は治療前に先生に相談してみてください。治療ステップによっては、とりあえず痛みを生じにくい歯の移動を優先する、などの対応が可能かもしれません。
9回に渡り続けてきた〜歯列矯正治療中の痛みについて〜もとりあえず今回が最終回です。振り返ると他にも紹介し忘れたものもあるのですがまたの機会に。
歯列矯正治療を始める患者様の多くは痛みに関して何らかの不安を抱えながらスタートします。けれど、実際に矯正治療を始めてみると意外に平気だったりすることも多いのです。不安なことはどんどん担当の先生に聞いてみましょう。そして、健康的で素敵な笑顔を手に入れてくださいね。
歯列矯正治療中の痛みについて(8)
今回はPART1の最終ブログ
今までのまとめ
PART1〜矯正装置による機械的刺激から生じる痛みに対する対応策
?ワイヤーエンド
?歯の裏側の装置
?フック
以上、機械的刺激による痛みの好発部位と対処方法を説明しました。
番外編として、特に激しいスポーツをする方に”マウスガード“をご紹介しました。
しかし、これだけいろいろやっても口内炎ができてしまう場合もあるのです。ayakomamaさんがそうでした。けれど、ayakomamaさんのブログにもあるように矯正装置装着直後、口内炎が出来てしまった患者さんでも少し時間が経つと出来にくくなります。これは間違いありません。
そこで今回は・・・口内炎が出来てしまった・・・時の対処の方法についてです
口内炎に対する対処法
歯科医院としては合成副腎皮質ホルモン剤を処方することになります。医院によってはレーザー治療を導入している場合もありますが、矯正歯科医院では・・・他に使い道がないので(笑)。一般歯科ですと、手術、歯の神経の治療、虫歯の治療etc、その臨床的効果についての見解は様々ですが、とにかく矯正歯科に比べれば応用範囲が広いのは確かです。もし、アクイユ矯正歯科で口内炎のレーザー治療を希望される場合には??大丈夫です。徒歩10秒の歯科医院をご紹介しますから(笑、でも本当です。が、レーザーを実際に口内炎の治療に応用してみた感想を聞いたところ・・・「まあ〜、そこそこかな〜?あんまり劇的に効くってわけでもないな〜」ということで、効果は認めるものの、レーザーを照射すれば一瞬のうちに痛みが消えるというわけでもないようです)
写真上がアフタゾロン、下がアフタッチという薬です。他にも後発薬も含め口内炎用の合成副腎皮質ホルモン剤はいくつかあります。舌など、動きの多い患部にはアフタッチのような比較的しっかりと患部に接着してくれる貼付薬のほうがお勧めです。個人的には口内炎に罹ったら、まずアフタッチを使います。部位的にアフタッチが使えない場合にのみ、アフタゾロンなどの軟膏を使うことが多いです。
歯科矯正 飯能市 秩父市 三芳町
歯列矯正治療中の痛みについて(7)
歯列矯正治療中の痛みについて〜今回はラグビーや柔道など特に激しいスポーツをされる患者様への対応策について
実のところ歯列矯正治療中のスポーツにさほど制限があるわけではありません。陸上のカールルイス選手、ヤクルトスワローズの青木宣親選手、柏レイソルのリカルジーニョ選手ら、矯正装置を装着しながら各界の第一線で活躍している(いた)スポーツ選手は多くいます。そうは言っても、ボディーコンタクトの多いスポーツとなると矯正装置により口唇が傷つくことも考えられますし、何らかの対策が必要になることもあります。
ボクサーがつけているようなマウスピース様の形をしています。中央付近に開いている穴は呼吸を確保するためのものです。これをスポーツ中に使用してもらうことで口唇が傷つくのを防ぐことができます。
歯科矯正 狭山市 入間市 東村山市
歯列矯正治療中の痛みについて(6)
PART1〜矯正装置による機械的刺激から生じる痛みに対する対応策
?フック
歯列矯正治療中に使用するエラスティックを引っ掛けるためのフックなのですが・・・予想外に痛みを訴える患者様が多いです。やはり”小さく飛び出ている”ところが気になるようです。
対処の方法
これは比較的簡単です。指で押し込む(笑)。いや、本当にです。ある程度は曲がりますから大丈夫です。ただ、押し込みすぎると今度はエラスティックが掛けにくくなりますから、その際には爪楊枝などで少し引っ張り出してあげてください。また、ブラケットガードを使用するのも有効です。
歯科矯正 埼玉県 所沢市
歯列矯正治療中の痛みについて(5)
PART1〜矯正装置による機械的刺激から生じる痛みに対する対応策
?歯の裏側の装置
リンガルブラケット
歯の裏側に付ける矯正装置です。装置装着当初は表から矯正治療を行う場合よりも違和感を強く感じることが多いようです。
STロック
表から矯正治療を行う場合にも、部分的に歯の裏側に装置を装着することがあります。STロックはその一例として取り上げました。
対応の方法
ブラケットガードを使用する以外にこれといった有効策がないというのが正直なところです。リンガルブラケットにしろSTロックにしろ、矯正装置そのものですので、前回のワイヤーエンドのようにカットしてしまうということができません。
しかしながら、多くの患者様において装置装着直後の1週間程をブラケットガードを利用していただくことで、次第に慣れてきて痛みを感じなくなります。あまり心配されずに、とりあえずは1週間程度様子を見ていただくのが良いかと思います。
歯科矯正 狭山 入間 東村山
歯列矯正治療中の痛みについて(4)
今回からは歯列矯正治療中の痛みに対する具体的な対応策を書いてみたいと思います。
PART1〜矯正装置による機械的刺激から生じる痛みに対する対応策
?ワイヤーエンド
ワイヤーエンドとは奥歯に付けたチューブといわれる矯正装置から出ているワイヤー部分の事を指します。
上の写真の青い○で囲んだ装置がチューブといわれるもので、赤い矢印で指した部分をワイヤーエンドといいます。診察を終えた直後はこのようにチューブからワイヤーが出ていないか、折り曲げているか、いずれにしても頬に引っかからないように処置されます。ところが、1,2週間後、以下の写真のようにワイヤーエンドが伸びてくることがあります。
上の写真の赤い矢印で指した部分が伸びてきたワイヤーエンドです。こうなると多くの患者様は”頬に針金が引っかかる”のを自覚するようになります。ではなぜワイヤーエンドは伸びてくるのでしょうか??
拙い作図で申し訳ありませんが、歯列矯正を始めた当初の歯並びは多くの場合凸凹していますから、ワイヤーもそれにあわせて曲がった状態です(下図緑線)。ところが、治療が進むにつれて歯並びが整い、同時にワイヤーも真っ直ぐになってきます(下図赤線)。この、曲線と直線のワイヤーの長さの差が、奥歯のチューブの後ろから伸びてくるのです。ですから、一般的には治療の初期段階ほどワイヤーエンドが伸びてきます。
対処の方法
望ましいのは歯科医院でカットしてもらうことです。短時間で終わる処置ですし、確実です。なかなか歯科医院に行く時間が割けない場合にはブラケットガードという粘土のようなもので対応すると良いでしょう。
上の写真がブラケットガードです。粘土のようなもので、他にワックスとかブレースガードなどの呼び方もあります。これを必要量ちぎって下図のように装置に押し付けます。
ブラケットガードは、他にも歯列矯正治療中の機械的刺激による痛みに対して広範囲に使用できます。
次回も今回の続きです。矯正装置の機械的刺激による痛みが生じ易い部分を提示しながら対処方法を書いてみます。
歯列矯正 新座市 ふじみ野市 小平市
歯列矯正治療中の痛みについて(3)
歯列矯正治療中の痛みについて、三回目は臨床的な経験則をもとに痛みの質を考えます。
歯列矯正治療中の痛みに関する臨床的な経験則?
“矯正装置の機械的刺激による痛みを感じた患者様は、次回予約日を待たずに痛みを主訴として再来院されることが多い”
歯列矯正治療中に痛みを訴えて来院される患者様の多くは、痛みが生じている部分を明確に示します。例えば「右上奥の頬のあたりが痛いです」とか、「舌の左側が痛いです」といった具合です。歯根膜由来の痛みの特徴である「かむと全体的に痛い」という訴えで予約日以前に来院されることはあまりありません。このことから以下のようなことが推測されます。
機械的刺激による痛み=局所的な我慢できないほど強い痛み
炎症に起因する痛み=痛いことは痛いが我慢できないほどの痛みではない(病院に行くほどではない痛み)
これを鑑みて前回の患者様による痛みの感想を考えてみると、「すごく痛かった」「最初はかなり痛かった」の中に若干、機械的刺激による痛みに対する感想が含まれているかも知れませんが、その多くは炎症に起因する痛みに対する感想と考えて良いのではないでしょうか(注:機械的痛みを感じて来院された患者様には、私も「痛みはどうでした?」という漫然とした質問はしません。もっと具体的に、例えば「前回お痛みのあった左上の装置はどうですか?」といった質問の仕方をするので前回示した感想の中に機械的痛みに関する回答はあまり多くは含まれていないと考えています)
歯列矯正治療中の痛みに関する臨床的な経験則?
“炎症に起因する痛みを、治療開始当初はかなり強く訴えた患者様でも、3ヶ月もするとあまり痛みを訴えなくなる”
この原因としては、どのような痛みであるかがわかったことと、痛みに対するコントロールの仕方がわかったことが大きいと思われます。痛みの性質がわかっていると、その心構えがあるので同じ強さの痛みであっても、最初ほど痛みを感じなくなっている可能性があります。また、矯正治療日から数日の間は固いものを食べないようにする、あるいはあらかじめ痛み止めを服用することで痛みの発生を抑えるなどの痛みに対するコントロール方法を上手に利用していると考えられます。
次回からは歯列矯正治療中の痛みに対する具体的な対応策について書いてみたいと思います
歯列矯正 飯能 秩父 三芳
歯列矯正治療中の痛みについて(2)
実際にどの程度の痛みなのか?
実は”痛みの程度”を説明するのは非常に難しいことです。なぜなら痛みには評価する際の”単位”がないからです。「150gくらいの痛みが3日ほど続きます」などど表現できれば良いのですがそうもいきません。そこで、これから歯列矯正治療を始めようと考えている方に最も理解しやすい説明方法であろうという意味で、実際に歯列矯正治療を受けられている患者様からお聞きする言葉をもとに、どの程度の痛みであるのかを類推してみることにします。
矯正装置を装着して1ヶ月目の患者様の感想
私は、初めて装置をつけた患者様に対して、必ず次回の診察日(約1カ月後)に「お痛みはどうでしたか?」と聞くようにしています。このときの患者様の痛みに関する感想を割合で示すと概ね以下のようになります。
「すごく痛かったです」と話される患者様=10%
「最初はかなり痛かったけど今は平気です」=40%
「最初は少し痛かったけど今は平気です」=40%
「全然痛くなかったです」=10%
もちろん、患者様によって表現は違いますし、厳密に統計をとってみたわけではないのですが、経験的にこのような割合だということです。
しかしながら、これをこれから矯正装置を付ける患者様にそのまま当てはめるのは少々無理があります。何故かというと、感想を聞いた時点では痛みが治まっていることがほとんどだからです。誰しも過去の痛みの表現は和らぐのが普通です。そういう意味では上記感想はあくまで装置装着後1ヶ月時点での感想であることを考慮しなければ本当のことは見えてきません。つまり、装置装着後3日目に感想をお聞きすれば全く違った結果になるであろうということです。
ところで、ここで患者様が訴えた痛み(あるいは、その記憶)というのは、矯正装置の機械的刺激による痛みも、炎症反応に起因する痛みも多くの場合明確には区別されていません。歯列矯正治療による痛みについてというタイトルである以上、その辺にも何らかの答えを示さなければいけないでしょう。
そこで次回は臨床的な経験則を提示しながら歯列矯正治療中の痛みの程度についてより深く考察してみます。
歯列矯正 川越 清瀬 東久留米
歯列矯正治療中の痛みについて(1)
ブログをはじめて約2週間経ちました。ところが、矯正歯科クリニックのブログであるにも関わらず一度も歯科の話を書いていませんでした。何故かというと・・・。昨年後半、クリニックのホームページを立ち上げるにあたり矯正歯科関連の原稿ばかりを書いていたので少し気分転換したかったから(笑)
それはともかく、これから数回に分けて医療サイドからみた歯列矯正治療中の痛みについて書いてみたいと思います。
☆歯列矯正治療中の痛みにはどのようなものがあるのか?
これは大きく分けると
1)矯正装置が頬の粘膜や舌などにあたって生じる痛み
2)歯が動く際に生じる炎症反応に起因する痛み
に分類できます。
1)は矯正装置そのものが機械的な刺激となって生じる痛みで、頬粘膜や舌などが痛みを感じる部位になります。もっとも、医療サイドでもある程度予測可能な痛みで、2)に比較して対処しやすい痛みでもあります。表側の矯正装置ですと、後方の装置の頬粘膜の部分に痛みを感じることが多く、裏側の矯正装置ですと、舌が装置に当たるため舌の後方の両端に痛みを生じることが多いです。
2)は矯正装置によって歯に力を加えると、その結果として、歯が移動する方向の歯槽骨が吸収し、反対側の歯槽骨は新しく作られます(この反応を利用して矯正治療では歯を目的の場所に動かしていきます)が、その過程で炎症反応が起こり、痛みを感じるようになります。痛みの部位は歯根膜であり、患者様としては”かむと全体的に痛い”という言葉で痛みを表現されることが多いです。
次回は、「実際にどの程度の痛みなのか?」について、医療現場で聞く患者様の声をもとにお話しする予定です
歯列矯正 狭山 入間 東村山