家に猫がいる。黒猫一匹。
僕が大学5年の頃からいるから齢15位か・・・。猫としては随分な高齢だ。
逸話は多い。
セミを捕って見せに来るくらいは可愛いほうで、一度鳩を捕まえて見せに来た。
猫は獲物を見せて鼻高々なのだが、鳩は息絶え絶えの瀕死状態だ。
可哀相だから看病した。とはいっても鳩の飼い方など分からないから野鳥の会など、方々に教えを請うてなんとか自力で飛べるまでに回復した。
「あと少し、あと少しで空を飛べるからね!」
と、期待が高まっていたそのとき・・・
迂闊にも鳩の集中治療室のドアを開け放してしまったのだ・・・
そんなことも過去の話・・・
今ではすっかりおじいちゃんになってしまって動きも鈍く、セミどころか、固形のキャットフードさえ食べれなくなりつつある。
固形が食べれないということは、シーチキンみたいなキャットフードを食べるしかない。
そもそも以前からこの猫は生意気な野郎で、同じ缶詰でもモンプチしか食べない。ビッグAで買ってくるような50円のシーチキンはお口に合わないのだ。仕方がないからそのシーチキンを僕と親父で食べるわけだけど、何ともやりきれないではないか。
妹が道端でミャーミャー鳴いていたのを拾って来たのが我が家の一員になった理由だ。我々がペットショップに買いに行ったわけではないのだ。
もちろん血統書などないし、ただの真っ黒い猫だ。国が違えば悪魔の使いだ。
なのに、一家の大黒柱たる父親と、長男の僕が50円のシーチキンで、猫が150円のモンプチとは酷い話ではないか。
で、次世代を担う長男としては、母親の庇護の元にぬくぬくと生活している生意気なこの猫に「一泡ふかせたろ」と、復讐の機会を虎視眈々と狙っていたのだ。
泡吹かせるには酒が良かろうと思って、猫の水入れにビールを入れてみたがさすがにこれは失敗に終わった。それどころか、猫用の水入れにある、気の抜けたビールを飲まされそうになった。女はシャレが通じないから怖い。
シャレが通じないならお洒落はどうか??ってことで、普段魚ばかり食べていて、口臭が魚臭い我が家の猫のお洒落計画の一環として、モンプチの食べ過ぎでフラフラしてる猫をひっ捕まえて、ブルガリの香水をふりかけてみた。
思えば、この世の中にブルガリの香水を身にまとっている猫がどれだけいるというのか・・・世の人はブルガリの芳香を求めてショップに走る。思惑は色々とあろうがとにかくブルガリのブランドバリューは衰えを見せない。本職のジュエリーがイマイチなのが面白いけど。
そう、本来、我が家の黒猫は僕に感謝すべきなのだ。ところが、香水の臭いは猫には強烈過ぎたらしい。結局はどうってことはなかったのだが振りかけて10秒くらいはむせていた。猫がむせるとは知らなかった。その後も顔を拭いたり舐めてみたり、とにかくブルガリの香水は我が家の猫のお肌には合わなかったみたい。
で、これはやめようと思ったのだけれど、意外な意見が一名、母親。
「あ〜〜ら、すごくいい香り。今日は魚臭くないわね〜〜」
[:びっくり:]続けたろか[:びっくり:]