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田舎に帰ろう①

 

子供のころは夏休みになると1ヶ月まるまる鹿児島で生活していた。

母の実家があったからだが、鹿児島といっても薩摩半島の南端、開聞岳がある近く。典型的な田舎町であった。

 

ずいぶん最近のことのように鮮明に覚えているけれど、考えてみればもう30年以上も前の話だ。いつもながら過ぎ去った時間は短く感じる。

思い浮かぶ記憶の中には祖父母をはじめ故人も多く人生の儚ささえも感じてしまう。

 

母の実家は小さな本屋だったが、僕が幼少の時分は養鶏場も兼ねていた。

養鶏場というところはゲージが縦に何列もあるから子供の目線から見ると、自分より高い位置に鶏がいることになる。これは経験すれば分かると思うけれどすごく怖い。籠に入っていると分かっていても怖い。

しかも臭いし、何百羽もの鶏の騒々しさは子供にとって恐怖以外の何ものでもないから大嫌いな場所だった。

 

養鶏場で採れた鶏卵をパックに詰めるのも当時は家庭内作業であった。

自宅に隣接した小さな養鶏場だったから、全て手作業。養鶏場で採れた鶏卵を自宅に運び込んで重さが均一になるように販売用の紙パックに詰めるのだ。

 

ところがある日、鶏卵を購入したお客様からクレームが来た。

消費者から生産者へ直接連絡が来るのも田舎ならではと思うがクレームの内容は

 

「お宅の卵の中にゆで卵が入っていた!!」

 

どうやら自宅用にゆでた卵を販売用の紙パックに詰めた阿呆がいたらしい。

 

もちろん、全責任を僕一人で背負う羽目になった。

 

責任は請け負ったが当時3歳くらいだったからどの程度責任を感じていたかは定かではない。

 

何はともあれ、おおらかな時代で良かったとしか言いようがない事件である。

 

今なら間違いなくトップニュースだ。産地偽装なんかよりよっぽどネタとして面白いし、とりわけ、みのもんたなんかは好きそうなネタである。

ともかく、四方八方からコテンパンに叩かれただろう。

 

反面、当時3歳の僕が記者会見で「ごめんなちゃい」と言ったら世間はどう反応したのであろうか・・・

 

・・・見て見たい気もする・・・

 

 

 

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