歴史小説には珍しく敗者を主人公にしています。
1人は100万石の大名であったにも関わらずやることなすこと場当たり的でついに秀吉により流罪とされてしまった織田信長の次男、信雄。もう1人は織田家と同じく滅亡の道を歩んだ後北条家に生まれたものの、時局を読むことに長け、小田原征伐の際にも韮山城において秀吉の大軍を僅かな手勢で数か月防いだ北条氏康の5男、氏規。
同じく名将の子息として生まれたものの、信雄には才がなく、氏規には運がなかった、その対比が鮮やかでした。
自分は先入観を持ちたくないので裏表紙の解説も読まずに読み始めることが多く、この本もそうでした。それもあってか最初の内はなんで信雄を軸に話が展開するのか意味が分かっておらず読むのをやめようかとも思いましたが中程から著者の意図がわかってきて後半は面白かった。敗者を主人公にして読者に読ませるのってかなり難しいと思うのです。そういう意味でも興味深い小説だと思います。同じ伊東潤氏の小説で「巨鯨の海」というのがあります。こちらもお勧めです。
written by 所沢市、東久留米市、飯能市 近くのアクイユ矯正歯科クリニック